in 屋久島

2022年12月 私史上はじめて屋久島の地へ足を踏み入れました。屋久島へは鹿児島から飛行機で約40分で行くことができます。到着してから現地の関係者と待ち合わせ。待ち合わせ場所が高台にありそこから広大な海が見えます。早くも屋久島に来たことを実感することになりました。しかし屋久島の天気は変わりやすく、晴れ間があってもすぐに雨に襲われます。1年のうち365日以上雨が降る。。という現地の方の言葉のとおり、このあと屋久島の変幻自在の天候に左右されることになります。

しばらくすると激しい雨が降り注ぎます。湿度も急激に上がり、自然のにおいのようなものを空気中に感じます。ふと見上げれば大きな虹が目の前にかかっていました。気温は東京とあまり変わりません、むしろ風も強く少し寒さを感じます。人工的な南国の行楽地という印象は全くありません。手のついていない自然がそのまま迫ってくる圧迫感のようなものさえ感じます。

圧倒的な自然を前にして、自然の豊かさだけではなく、自然の厳しさ、恐ろしさのようなものが表裏一体に見えてきます。人が暮らしていく場所としては大変美しくもあり、また大変厳しい環境でもありそうです。この大きな岩ひとつでさえも、人の手で動かすのは大変です。

この島で暮らすあるイタリア人男性の家にやってきました。ここで行われる環境再生ワークショップに参加することが今回の目的の1つ。雨、風を凌ぐ深い軒のある建物、大地の呼吸を停めないように基礎は石破建ての高床式の構造になっています。庭の樹木への日当たりや雨水の流れ、土の中の微生物に至るまで、建物が自然に与える影響を最小限のとどめられるように細心の注意が払われて計画されたものです。この場所を借りて住まわせてもらう、その謙虚な姿勢がこの建物に表れていました。自然をコントロールするという考え方ではなく、自然の共に暮らすことへの強い意志。環境再生の現場と屋久島でのリアルな暮らし方に触れ、自分にとって今すぐには整理がつかないものではありますが、大変貴重なものを見ることができたように思います。これが私にとって、屋久島での最初の経験となりました。

 

坪井当貴
建築設計事務所

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