谷保の「やぼろじ」へ

友人建築家の和久さん(WAKUWORKS代表)のアトリエがある谷保の「やぼろじ」を訪問しました。まずは何からお話しましょうか、とてもたくさん書きたいことがあって、ちょっと長くなってしまうかもしれません。でもとても大切なことがたくさんあるので、ご興味もたれた方は是非、がんばって最後まで読んでいただけたらうれしいです。まず、和久さんとはじめてお会いしたのは「おじゃんせ屋久島プロジェクト」に参加させてもらったことがきっかけです。小柄で素朴ないで立ちながら、(人のこといえませんが)落ち着きのある深い表情、かつこどものような屈託のない笑顔で挨拶をされたことを覚えています。その場の雰囲気を創り出す。人を寄せ付ける人柄。まさにそのような第一印象を受けました。一緒に働いているスタッフの方々も明るい雰囲気に溢れ、自分以外の人や物に対し、平等にかつ敬意をもって接している姿を見て、彼らの仕事の内容がとても魅力のあるものにつながっているのだろうと思いました。

本日訪問した「やほろじ」は彼らの活動の拠点となっている場所。江戸時代から続く旧家の地主さんのご協力により、地域の方々に役立つ場所を提供する。そのような思いからこの場所は生まれたそうです。約360坪の敷地には、築70年の母屋や蔵、そして立派な庭があり、建物とともに共存した草花や樹木、かつての日本の暮らしの趣きがうかがえるものです。その場所を活かす手法でリノベーションし、中では5つの事業体がこの場所を拠点にして活動をされています。もともとあった建物、新たに増築された部分が敷地内に混在し、追加された建物には自然素材である杉材を使い、釘に至るまで木の素材にこだわりをもっています。いづれ土にかえる自然の材料を極力使い、建物下の土のことや敷地内の水の流れを調べ、この場所を訪れる鳥や生物たちにとって、建築が異物とならないように、今ではとても難しくなってしまった共存の原点を見つめなおすこと、そして地域の住まわれている方々にも開かれた場所となること。この敷地内には井戸もあり、かまどやシャワーも併設されています。万が一の災害時には地域の防災拠点としても機能できる施設となっています。前を通れば思わず足を踏み入れてみたくなる場所、私もそんな思いを抱きました。


敷地の脇にある細い路地。ここに建っていた大谷石の垣根をとりはらい、路地を通る近隣の方々が通りやすく、視界が開けるように工夫をされています。また、壊した大谷石は敷地内で再利用をすることで、ゴミを出さず、路面や敷地内の通路に有効的に使われています。石と土の間には隙間が生まれ、雨が地面に自然浸透し、空気を送り込むことで植物や土中の菌糸にも栄養が行き渡る仕組みです。


雨の道には廃材の瓦を砕いたものが使われています。一見わかりづらいですが、この雨の道には木炭や枯れ葉が敷き詰められ、自然な雨水浸透を促しています。これらの手法のすばらしいところは、人の住む場所がアスファルトに固められた現代において、大量の雨水が下水に流れ込み、山々では自然な水や空気循環が止まってしまうことで、各地で土砂災害が多発する要因になっていることに目を背けてきた建築・土木のあり方に一石を投じるものと言えます。人はその場所を借りて暮らしている。そこにある木々や生物と同じように。そのような意識が低下した世界において、彼らの還元する手法はこれからの未来に重要なヒントがあると思っています。これからもWAKUWORKSのみなさんとのご縁を大切にしていきたいと思います。


アトリエ入り口

ペレットストーブ

心地よいアトリエ

シンプルな木組み

窓から見える路地の風景

手作りのお菓子(とてもおいしかった!)

こどもたちに向けて。

 

 

坪井当貴
建築設計事務所

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