ある女性のための小さな平屋(one story house)
ご実家があった土地を相続され、ご自身のこれからの暮らしを平屋の家で過ごしたい。そのようなリクエストをいただきました。もともとご実家のあったこの土地は、依頼主にとっては大変馴染みの深い場所。かつて家族で過ごした生活の記憶はご自身の身体にも深く刻まれています。建て主の希望は、この家でこれからの人生を楽しみながら静かに暮らしたいというシンプルなものでした。設計では、この先の暮らしのために身体的な「バリアフリー」として計画をしておくこと、またご実家で暮らした記憶を可能な限り、新しい家にも引き継ぐ「時間のバリアフリー」をもう1つのテーマとしました。特に大切にしたことは、ご実家の間取りを参考にしながら、かつての暮らし、その時間を共有してみることでした。そこから7mの庭の奥行はそのまま残すことや、室内から見える庭の景色のこと。食卓のあった場所で感じた朝日の入り方。近隣の家との距離感。家の中を抜けていく風の感じなど。建て主さんが抱く家への安心感は、「時間のつなげ方」にヒントを求めました。その上で新しい家に盛り込むアイデアとして、前の家にはなかった高い天井、吹き抜けをつくることをご提案しました。水平方向では庭や近隣建物との距離感をそのまま残しつつ、垂直方向では平屋の屋根の形が天井にそのまま表れる勾配天井。新しい生活のシンボルとしての空間。新しい家だけれどいつか見たことのある風景を目指して。英語では、平屋のことをone story houseというそうです。この家は建て主さんにとってご家族との暮らしの延長にある、新たなone story houseとなりました。

物件Data
用途 平屋(ある女性のための終の住処)
所在地 東京都西東京市
構造/規模 木造 1階建て
延床面積  80㎡(24坪)
設計・監理 坪井当貴建築設計事務所
施工 コンストラクション・マネージメント方式
   (正しい家づくり研究会)

坪井当貴
建築設計事務所

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